【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第9章 春夏秋「冬-3」
蘆屋が振り返るより先に、夏油がそっと腕を引いた。
ふわり、と。
自然な動きで主人公を自分の方へ引き寄せ、
そのまま軽く抱き込む。
夏油は穏やかに笑っている。
けれど、その目だけはしっかり店員を見据えていた。
すると店員は、一瞬だけ目を丸くし──やがて肩を竦める。
店員「おっと、これは失礼いたしました」
芝居がかった仕草で胸へ手を当てる。
そして、どこか楽しそうに口元を緩めた。
店員「……あまりにもお綺麗でしたので、つい」
まるで執事のように一礼する。
店員「大切な宝石には、すでに持ち主がいらっしゃったようですね」
さらりとそんなことを言い残し、店員は優雅に身を引いた。
蘆屋は完全に処理が追いついていない。
「えっ、あ、え……?」
混乱している蘆屋を腕の中へ収めたまま、
夏油はくすっと笑う。
夏油「困った人だ」
そう言いながらも、抱く腕は離さなかった。
それから店を出たあと。
夏油は人通りの少ない場所までゆっくりと歩く。
高層ビルの裏手。
朝の光がまだ薄く、静かな空気が漂っている。
蘆屋はきょとんと辺りを見回した。
「……どこへ行くんですか?」
すると夏油は答える代わりに、ふっと微笑む。
その瞬間。
空気が揺れる。
ぞわり、と呪力が広がる。
次の瞬間──巨大な影が空間を裂くように現れた。
「……!?」
白銀の鱗。
長大な身体。
天へ伸びる角。
そして、巨大な翼。
朝日に照らされたその姿は、呪霊というより神話そのものだった。
「こ、これって……」
驚き呟く蘆屋へ、夏油は穏やかに笑う。
夏油「そう、君もよく知っているだろう?」
夏油は白い龍を見上げながら、静かに告げた。
夏油「──特級呪霊、応龍(インロン)だよ」
にこり、と微笑む。
応龍。
中国で、“翼を持つ龍”と呼ばれる存在。
古代神話において、神々に仕え、天候すら司ると言われる龍。
(……まさか、夏油さんが、中国へ来てたのって……)