【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第9章 春夏秋「冬-3」
その瞬間。
蘆屋の思考が止まる。
「……?!」
声にならない。
ただ目だけが大きく見開かれる。
そんな蘆屋を見ながら、夏油は静かに話を続けた。
夏油「あの日、私も現場にいたんだ。
君たち一家の長に会いたくてね
ただ、到着した時には既に……無惨な姿になっていた」
低く落ちた声音。
部屋の空気が、少しだけ重くなる。
夏油「そんな中、不安定ながらにも、膨大な呪力を纏って
領域を展開しようとしている君を見つけた」
蘆屋の指先がぴくりと震えた。
夏油「一瞬の出来事だった君の呪力量から、
展開範囲を瞬時に計算した。
その範囲内にいた子供を、二人……助け出した。」
夏油はそこで一度言葉を切る。
夏油「当時の君と、同い年くらいの男の子と──その妹」
静かな声。
けれど、その名前が告げられた瞬間。
夏油「ハヤミと、ヒナタだよ
……覚えているかな」
「……ハヤミ、くん……ヒナタ、ちゃん……」
主人公は、確かめるようにその名前を呟いた。
蘆屋ハヤミ。
私の唯一の同い年。
ずっと一緒にいた幼馴染。
そして、ヒナタはその妹。
当時、まだ三歳だった小さな女の子。
──あれから10年。
今、どうしているのかなんて、想像もつかない。
記憶の奥底に沈んでいた名前。
思い出した瞬間、脳の奥を鋭く抉られたような感覚が走る。
心臓が抉られるような痛み。
「ハヤミ…く…」
喉が震える。
「はや……っ」
次の言葉が出ない。
視界がぐらりと揺れた。
胸が締めつけられる。
呼吸の仕方を忘れたみたいに、浅い息だけが何度も漏れた。
「っ、はぁ……は、ぁ……っ」
指先が震える。
頭の中で、断片的な光景がちらつく。
赤。
血。
崩れた床。
誰かの泣き声。
焼けるような呪力。
「はぁ、っ……は、ぁ……っ」
うまく息が吸えない。
肺が潰れたみたいに苦しい。
自分でも制御できないほど感情が溢れ始め、
ソファの端を強く握り締めた。
蘆屋の荒い呼吸を見つめながら、夏油は静かに目を細めた。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
高層マンション特有の静寂の中、
スリッパの擦れる音だけが小さく響いた。
蘆屋の隣へ腰を下ろすと、怯えさせないよう、
そっと背中へ手を添える。