【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第8章 春夏秋「冬-2」
気配が、ない。
(……気のせい?)
そう思おうとしても。
確かに“男の声”だった。
しかも一度じゃない。
呼ばれている感覚だけが、妙に鮮明に残っている。
蘆屋はゆっくりと体を起こす。
(……どこ)
呪力を頼りに、少しずつ方向を探る。
玄関の方。
そこだけが、妙に“開いている”ような気がした。
蘆屋は手探りで立ち上がると、ゆっくりと足を運ぶ。
一歩。
また一歩。
寝ている二人の間を避けるように、音を立てないように。
やがて、玄関の前。
ドアの存在だけが、はっきりとそこにある。
手を伸ばす。
冷たい空気が、指先に触れる。
ゆっくりとドアノブに触れた、その瞬間。
――外から声がした。
夏油「……待っていたよ」
蘆屋の動きが止まる。
その声は、いつしか聞いたものと同じだった。
低く、静かで、妙に落ち着いた声。
そして、もう一度。
夏油「まっていたよ」
その瞬間。
呪力の輪郭が、はっきり“人の形”を結ぶ。
そこにいたのは――
夏油傑だった。
暗闇の中で、まるで最初からそこに立っていたかのように。
夏油「君に会いたくなってね。迎えに来たよ」
その存在を認識した瞬間、蘆屋は呪力の“探知”をやめた。
外の冷えた空気が、玄関の隙間からじわりと侵入する。
眠っているはずの部屋の中は、何も知らないまま静かだった。
伏黒も、虎杖も、まだ微かな寝息を立てている。
夏油は一歩も動かず、ただ穏やかに続けた。
夏油「少し話をしようか」
声は優しいのに、拒否を許さない静けさがある。
だが、蘆屋は拒まなかった。
そして――
その夜。
12月24日。
伏黒と虎杖が眠る部屋から、蘆屋の気配はふっと消えた。
静かなまま、何も変わらない夜だけが続いていく。
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