【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第8章 春夏秋「冬-2」
~ ×乙骨② ~
さっきまで張り詰めていたせいか、
力が抜けた途端に色んな感情が浮かび上がってくる。
もし。
もし、乙骨が来ていなかったら。
あのまま領域を維持していたら。
禪院直哉を、本当に——
そこまで考えて、ゆっくり目を伏せた。
胸の奥が、少しだけ冷える。
その時だった。
不意に、記憶の奥から声が蘇る。
『──君の奥底に眠るものは、
いつか仲間を危険に晒すかもしれない。』
低く、静かな声。
夏油傑の言葉。
あの日、冗談みたいに笑いながら告げられた言葉。
今になって妙に現実味を帯びて胸へ沈む。
「……本当に、そうかも」
小さく呟く。
領域を展開した瞬間の感覚を思い出す。
あの空間では、自分が絶対だった。
簡単に壊せる気がした。
簡単に、奪える気がした。
「……はぁ」
思わずため息が漏れる。
すると、ちょうどそのタイミングで浴室の方から足音が戻ってきた。
乙骨「……どうしたの?」
乙骨の優しい声。
近づいてくる気配。
乙骨「そんなにため息ついて」
心配そうな声音だった。
乙骨はテーブルへコト、と湯気の立つマグカップを置く。
乙骨「はい、お茶、もてる?」
優しく手渡される。
温かい感触が指先へ伝わった。
乙骨もそのまま隣へ腰を下ろし、自分のカップを持つ。
しばらく、二人とも何も言わなかった。
ただ静かに湯気が揺れている。
やがて蘆屋が一口飲むと、
乙骨が少し安心したみたいに小さく息を吐いた。
それから二人は、ぽつぽつと他愛もない話をした。
高専であったこと。
任務帰りのパンダがまたお菓子を勝手に食べていたこと。
狗巻棘が相変わらず突然現れては消えること。
そんな、どうでもいいような話。
けれど、その“普通”が心地よかった。
時折、小さく笑う声が混ざるようになって。
「ふふっ……それ、絶対怒られてるでしょ」
乙骨「うん、しっかり怒られてたよ〜、、」
乙骨もつられるように笑う。
しばらくして。
乙骨がふっと目を細める。
乙骨「……よかった」
静かな声。
乙骨「元気そうで」
そして乙骨は、そっと手を伸ばす。
指先が、蘆屋の目元へ触れた。
巻かれた包帯を軽く撫でる。
乙骨「……これ」
どこか遠慮がちな声。