【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第8章 春夏秋「冬-2」
圧迫された瞬間、頭の中がじわりと遠くなる。
苦しい、というより。
感覚が、水の中へ沈んでいくみたいだった。
耳の奥で音がぼやける。
直哉の声も、部屋の空気も。
全部が薄い膜を一枚隔てた向こう側へ遠ざかっていく。
身体が軽い。
なのに、うまく動かない。
呼吸をしなきゃ。そう思うけど
頭の中がふわふわする。
浮いているみたいな感覚が脳を満たしていく。
「……っ、……」
掠れた息が漏れる。
首を締められている現実と、
意識が沈んでいく感覚が噛み合わなくて、
蘆屋はぼんやりと顔を上げた。
「……な、おや……さん……」
声も、自分のものじゃないみたいに遠い。
「……や、め……」
言葉の最後が消える。
指先から力が抜けていく。
意識が落ちる。
——その寸前。
ふっと、首から力が消えた。
「っ……は、……ぁ……」
空気が肺へ流れ込む。
けれど酸素が戻っても、頭の奥はまだぐらぐら揺れていた。
視界のない暗闇が、さらに深く波打つ。
身体の感覚が戻り切る前に、再び首へ指がかかる。
直哉「ラクになるのは、まだや」
低い声。
ぐっ、と圧迫される。
「っぁ……」
また、ふわりと沈む。
今度はもっと早い。
頭の中が白く霞んで、思考が途切れ途切れになる。
もぅ、だめ——
そう意識が手放しかけた瞬間。
蘆屋の唇が、微かに動いた。
「……Rāh en──(由暗より出でて)」
直哉の手がぴくりと止まる。
「Vā relu──(暗より黒く)」
空気が震えた。
「Tōra mei.(その穢れを禊ぎ祓え)」
——ぶわっ!!!!
次の瞬間、凄まじい呪力が空間を裂いた。
黒い帳が一気に降りる。
壁も天井も飲み込むように、結界が広がっていく。
直哉が反射的に手を離した。
直哉「なっ……!」
吹き荒れる呪力。
拘束されたままの蘆屋から、異様な圧が溢れていた。
直哉「こいつ……!!!」