【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第8章 春夏秋「冬-2」
抱えられたまま運ばれる時間は、妙に長く感じる。
視界がないぶん、音と揺れだけが頼りだった。
扉が開く音。
靴が床を踏む乾いた音。
そして、また別の扉が閉まる音。
次の瞬間、身体がふわりと沈んだ。
「っ……!」
ソファらしき柔らかい感触に落とされて、バランスを崩す。
手が空を掴むみたいに動いて、慌てて体勢を整える。
どこか、布と木の匂いがした。
外とは違う、閉じた空気。
「……ここ、どこ……?」
不安がそのまま声になる。
返事はすぐに落ちてきた。
直哉「……あんたが知る必要はない」
低く、乾いた声。
それだけで、この場の主導権がどこにあるかははっきりした。
少しの間があって、続きが投げられる。
直哉「心配せんでもええよ」
淡々とした口調。
直哉「どんだけ声出したって問題ない」
その言葉の意味が一拍遅れて沁みていく。
助けが来ないことを保証するみたいな、妙に静かな断言。
空気が、少しだけ重くなる。
その沈黙の中で、ふっと笑う気配がした。
武器でも見つけたみたいに、楽しそうな——
軽く、危うい笑み。
直哉「ほんま……おもろいな」
言葉は独り言みたいで、でも確かにこちらに向けられている。
次の瞬間、もう一度その気配が濃くなる。
「この間みたいに、呪力流されちゃあかんからね」
軽い口調だった。
けれど次の瞬間、するすると布が解ける音がする。
直哉が自分の帯を外しているのだと気づいた頃には、もう遅かった。
「っ……!」
手首を掴まれる。
そのまま背中側へ引かれ、帯が容赦なく巻きついていく。
きつく締められるたび、逃げ道が一つずつ消えていく感覚がした。
「や、……っ」
結び目が最後に強く引かれた。
直哉「はい、できあがり」
楽しそうな声。
直哉は拘束された手首を一度軽く持ち上げ、そのまま離す。
直哉「視界もなくて、手の自由も奪われる気分はどんなもん?」
嘲るように笑う気配。
ソファに座らされたままの蘆屋は、唇をきゅっと結ぶ。
返事の代わりに呪力を広げた。
見えない代わりに、探るように。
部屋の輪郭、気配、空間の奥行き。
誰かが潜んでいないか。
出口はどこか。
呪力が壁を撫でるように走っていく。