【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第8章 春夏秋「冬-2」
「ぼくも大きくなったら、おねえさんみたいなきれいな人と結婚できるかな!」
その無邪気な言葉に、乙骨が思わず「ははっ」と笑う。
乙骨「そうだね」
優しく目を細める。
乙骨「きっとできるよ」
男の子は嬉しそうにボールを抱え直すと、
「ありがとう!」と元気よく走っていった。
その背中を見送りながら。
冬の風が、静かに二人の間を通り抜けていった。
遠くで響く笑い声。
冷たい風。
その静けさを切り裂くように——
ブルルル、とスマホの振動音が鳴る。
乙骨はポケットからスマホを取り出した。
画面に浮かんでいたのは、
“伊地知潔高”
の文字。
乙骨「……」
乙骨の表情が少しだけ変わる。
嫌な予感がした。
乙骨「ごめん、ちょっと出るね」
「うん」
乙骨は少し離れた場所で通話へ出た。
乙骨「はい、乙骨です」
伊地知『乙骨さん、申し訳ありません。緊急で対応可能な術師が近くにおらず……』
電話越しの伊地知の声は、どこか焦っていた。
乙骨は静かに話を聞きながら眉を寄せる。
どうやら発生したのは二級相当の呪霊案件。
難易度自体は高くない。
乙骨なら単独で数十分もかからず終わるレベルだ。
けれど。
問題は今。
蘆屋を一人にすることだった。
乙骨は振り返る。
ベンチへ座る蘆屋。
冬の空気を吸い込むみたいに、小さく息を吐いている。
視力を失ったままの彼女を置いていく。
その選択に、乙骨は明らかに迷っていた。
すると。
「……行っておいで」
小さな声が届く。
乙骨「さん……」
「私は大丈夫だよ」
優しく笑う声。
乙骨は苦しそうに視線を伏せる。
伊地知『乙骨さん……?』
電話越しに伊地知が不安そうに呼びかける。
数秒の沈黙。
それから乙骨は、小さく息を吐いた。
乙骨「……分かりました。向かいます」
通話を切る。
けれど、すぐには動けなかった。