【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第7章 春夏秋「冬-1」
「なんだ。」
静かな声だった。
あまりにも静かで、伏黒の背筋が冷える。
蘆屋は力なく笑う。
(呪っても……許されてたんだ。)
その瞬間だった。
どろり、と。
蘆屋の身体から、重い呪力が溢れ出す。
床が軋む。
壁が揺れる。
空間そのものが悲鳴を上げるように震え始めた。
まるで結界が内側から押し潰されていくみたいに。
伏黒はすぐには動かなかった。
ただ、その呪力を見ていた。
奥底に沈んでいた感情。
怒り。
憎しみ。
悲しみ。
孤独。
伏黒はしばらく黙って見ていた。
脆く、壊れていきそうな姿。
けれど。
蘆屋の瞳から光が消えかけた瞬間、伏黒はゆっくり歩き出す。
揺れる空間の中を、真っ直ぐ。
彼女の正面へ。
逃げ道を塞ぐみたいに。
蘆屋がぼんやりと顔を上げた。
伏黒はその目を見つめたまま、静かに言う。
伏黒「……なにも見なくていいです。」
崩れる音が響く。
黒い感情が渦巻く。
それでも伏黒は逸らさない。
伏黒「俺だけを見ててください。」
そう言って、抱きしめた。
伏黒に抱きしめられたまま、しばらく時間が流れた。
荒れ狂うように溢れていた呪力が、少しずつ薄れていく。
軋んでいた空間の揺れも、ゆっくりと収まっていった。
伏黒の胸元へ額を預けたまま、小さく息を吐く。
「ありがとう」
伏黒がわずかに肩を揺らす。
蘆屋はゆっくり顔を上げた。
「私は、大丈夫だよ。」
その柔らかい笑みを見た瞬間、伏黒は少しだけ眉を寄せる。
少し考えて、静かに口を開く。
伏黒「……もし。」
蘆屋が目を瞬く。
伏黒は見つめたまま言った。
伏黒「もし、そっちの道を選ぶなら
俺もついていきますから。」
蘆屋の瞳が揺れた。
伏黒は視線を逸らさない。
伏黒「一人にはさせませんから。」
「―あ」
言いかけた、その瞬間だった。
ぶわっ――
再び空間いっぱいに映像が広がる。
今度はまた別の・・・
知らない夜。
血の匂い。
瓦礫。
そして。
圧倒的な呪力。
蘆屋がはっと息を呑む。
そこに映っていたのは黒い服を纏った男。
鋭い目。
傷だらけの身体。
その男へ向かって立つ、白髪の術師。
『――俺の勝ちだ。』
静かな声。