【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第7章 春夏秋「冬-1」
数十分後
曲がり角を抜ける。
長い通路を進む。
そして。
視界の先。
ぴょん、と。
白い何かが見える。
「……え。」
白い兎。
小さな足音。
ふわふわした尻尾。
その瞬間。
蘆屋の表情が、ぱっと変わる。
「……うさぎ。」
胸の奥が熱くなる。
さっきまで感じていた恐怖が、
少しだけ薄れていく。
「伏黒くん……!」
白い兎が、ぴょん、と足元へ跳ねてくる。
「……っ。」
その瞬間。
張り詰めていたものが、一気に込み上げた。
蘆屋はしゃがみ込み、思わず脱兎を抱きしめる。
ふわふわした毛並み。
小さな体温。
「……伏黒くんの、兎……。」
どこへ進めばいいかも分からなくて。
静かな迷路の中、
孤独だけが大きくなっていた。
脱兎は嫌がることなく、
蘆屋の腕の中で小さく鼻を鳴らした。
「……。」
蘆屋は目元を擦り、ゆっくり兎を手放す。
すると。
脱兎は、
まるで“ついてこい”と言うみたいに、
ぴょん、と通路の奥へ跳ねた。
「……。」
ぴょん。
ぴょん。
蘆屋は小さく笑って、その後を追いかけた。
――それから。
どれだけ歩いただろう。
開始から、二時間半。
ようやく。
長い通路の先に、人影が見えた。
黒い制服。
逆立った黒髪。
「……!」
伏黒も足を止める。
そして。
目が合った瞬間、
ほんの少しだけ表情が緩んだ。
伏黒「……先生。」
その声を聞いた瞬間。
蘆屋の中で、
ずっと張っていた糸が切れた。
「……っ、」
足が震える。
うまく呼吸ができない。
会えた。
やっと。
「……わ、」
声が掠れる。
「わたし、不安で……死ぬかと思った……。」
目に涙をいっぱい溜めたまま、
蘆屋はふるふる震える。
「そ、それで……、」
何を言いたかったのか、
自分でも分からない。
怖かったとか。
会いたかったとか。
置いていかないでとか。
いろんな感情が、
喉に詰まってうまく出てこない。
すると。
伏黒が静かに近づいた。
そして。
「……。」
ふわ、と。蘆屋を抱き寄せる。