【呪術廻戦】年下のきみが可愛くて。/みんな×主(先生)
第7章 春夏秋「冬-1」
蘆屋は慌てて離れようとするが、
伏黒はそれを許さなかった。
静かに、腕へ力を込める。
「……。」
伏黒「……。」
沈黙。
時計の針だけが進む。
そのまま。
気づけば、30分近く経っていた。
ようやく落ち着いてきた頃。
蘆屋はそっと、
ノートを引き寄せる。
そして。
少し迷ったあと、
小さく文字を書いた。
『私のどこを好きになってくれたの?』
伏黒はその文字を見て、
少しだけ目を細めた。
すぐには答えない。
珍しく、
本当に悩んでいるみたいだった。
やがて。
静かにペンを取る。
さらさら、と文字を書く。
『無事に出られたら教えてあげます』
「……。」
蘆屋はその文字を見つめたあと、少しだけ唇を尖らせた。
伏黒はそれを見て、ほんの少しだけ笑った。
蘆屋は伏黒をじっと見つめた。
(キス・・・したいって言ったら困らせるかな)
その思考が頭を過った瞬間。
伏黒がふっと視線を逸らす。
伏黒(・・・・・キスしたら困らせるだろうか。)
互いの思考がすれ違う。
気づけば時間はあと5分。
伏黒はすっと立ち上がって蘆屋に手を伸ばす。
「……。」
蘆屋は少しだけ目を丸くしたあと、
素直にその手を取る。
引き上げられるように、
ゆっくり立ち上がった。
手の温度が、
妙に熱い。
残り1分。
二人は自然と向かい合った。
「……。」
伏黒「……。」
言葉は無い。
言えない。
でも。
伏黒は静かに蘆屋を見つめたあと、
ゆっくり手を伸ばす。
頬へ触れる指先。
優しい手つき。
蘆屋の睫毛が小さく揺れる。
そして。
残り時間、
30秒。
伏黒が静かに顔を寄せた。
「……っ。」
そっと重なる唇。
今度は、
さっきみたいな確認じゃない。
確かめるみたいな、
静かなキスだった。
蘆屋は目を閉じる。
伏黒の指先が、
頬を撫でる。
心臓の音だけが、
うるさいほど響いていた。
カチ。
時計の針が最後を刻む。
その瞬間。
ガチャン――。
部屋の鍵が、
静かに解放された。