第6章 新しい場所
お風呂から上がり、ベッドの上で布団に潜る。
服を少し捲って、腹筋に口付けた。
二度ほど吸って唇を離し、ゆっくり上がっていく。
目の前まできた顔を見つめ、頬にそっと口付けた。
僅かに笑みが零れている。
「ふふ、どしたん?腹に痕つけたん?可愛ええなぁ……えっちする?」
「え……セックスって、どんな感じなんですか?その、気持ち的に……?」
額に口付けながら聞いて、隣に横になる。
仰向けだった宗四郎様はこちらを向き、お腹に手を置いて寄り添う。
「君の口から"セックス"て、出る思わんかった……。そやなぁ、幸せや〜思たり?その人が自分しか見とらん時間。安心して満たされて、めっちゃ好きや思う」
少し胸がチクリとした。
宗四郎様はそんな感情を持った人がいるんだ。
その相手は私でありたかった。
私も宗四郎様としたら、そんな風になれるのだろうか。
宗四郎様を幸せに出来るのだろうか。
「……私はいつも、宗四郎様しか見てません。儀礼服姿、他に誰のを見て興奮してたんですか?」
宗四郎様はきょとんとしながら見つめてくる。
そして、途端に表情が崩れ、クスクスと笑い出した。
脇の下に滑り込ませた手に、ぎゅうと引き寄せられる。
「妬いてもうた?紫音しか見えてへんかったんやけどなぁ……僕の彼女は紫音やろ?そういう目で見とるんは、今は紫音だけやよ」
"今は"か……嬉しいはずなのに、それは一時的なものだと思うと、すごく寂しかった。
私だけがずっと想っている。
何年も積み上げたきたものに、一時的なものなど、追いつくはずもない。
「……セックスしたら、私のこと好きになってくれますか?私だけ見てくれますか?」
「今は君だけ言うたやん。それに今は、好きなんやろなぁて感じやねん。わからん。"この子や"思うんか、"なんかちゃう"になるんか……」
そう言われると、するのが怖くなって、一生出来なくていいから、ここにいたいと思った。
きっともう、元には戻れないし、今のまま留まることも出来ないのに……。
このままでいればきっと、先を求めてしまう。
私も、彼も……。
与えられる温もりは確かにそこにあるのに、先の見えない不安に、私はひとり震えていた。