第2章 2人の日常
水音が響く磨りガラスの向こうを見つめる。
届くはずもないのに、ガラスに触れ、開けてしまいたくなる。
お風呂に入っている宗四郎様の着替えやタオルを置いて、ずっとここにいるのが気づかれないように慌てて逃げた。
あの人はきっと、私がそこにいることなんて、初めから気づいている。
「紫音?おる?」
脱衣所から出ようとすると、浴室から声が聞こえて足を止めた。
返事をしながら近付くと、「来て」とはっきり聞こえた。
――どこに?
「紫音〜?聞いとる?はよ来てー」
「……ど、どこにですか?」
戸惑いながら磨りガラスに手をついて聞く。
すると、「こっち」と答えられた。
――どっち?
怒られたら、怒られた時だ。そう思い、目を瞑ったまま扉を開けた。
すると、笑い声が聞こえてきて、間違えただろうかと不安になる。
「服、濡れてまうで?あと、目ぇ開けても大丈夫や。見えんて」
そうだ、今日の入浴剤は乳白色……恐る恐る目を開けると、ニコニコと微笑む宗四郎様が目に入って、クラクラした。
宗四郎様が、濡れてる……。
刺激が強すぎて、目を逸らしながらどうしたのか聞くと、洗顔フォームが切れていたらしく、慌てて交換しておいた。
「ごめんなさい、気づいていなくて……」
「ん〜?ええで。今日はもう終わっとるし」
何故いま、私を呼んだのだろう。
遊ばれているのだろうか……あんなに笑っていたし。
私にとって彼との日常は、刺激が強すぎる。