第3章 崩壊の前触れ
帰ってきた宗四郎様を出迎え、夕食やお風呂を済ませる。
いつもの抱擁はもう、ない。
ソファに座っている宗四郎様の斜め前の床に座り、「話があります」と切り出した。
宗四郎様は「ん」と短く答え、弄っていたスマホをテーブルに置いた。
「ずっと隠していてごめんなさい。私たちは婚約者です」
ジッと聞いていた宗四郎様の喉が鳴る。
とても動揺しているようだ。
僅かに汗も浮かべている。
「待って。いや、え?すまん。……僕、浮気してたっちゅーこと?」
宗四郎様の言葉に驚いた。
隠されていたことを怒るべきなのに、どうして謝っているの?
あなたは何も知らなかったのに、浮気になるわけがない。
ふるふると首を振って、宗四郎様を見上げる。
「浮気にはなりません。隠していてすみませんでした。それで……」
母に婚約の解消を頼んだことを話した。
「今まで本当にごめんなさい。こんな私に縛り付けて……これからは自由です。それと……私は宗四郎様が好きです。それだけは伝えておきたかった……」
家を探すのに時間がかかるから、もう少しここにいさせて欲しいことを言うが、宗四郎様からの返事はなかった。
「……家が見つかるまで、ホテルなどに行きます。それまで荷物は置かせて欲しいです」
着替えて出ようと思い立ち上がると、腕を掴まれて引き寄せられる。
抱き締められた腕の中は熱かった。
「どこにも行かんで。ここにいたらええやん。婚約とかはようわからんけど、君がここで待っとるんは、悪ぅない」
返事も出来ず、宗四郎様が離すまでジッとしていた。
宗四郎様の手が僅かに震えていた。