第3章 崩壊の前触れ
スマホを持った手首を掴まれた。
ギリギリと音が鳴る。
恐らく宗四郎様はそこまで力を入れているとは気づいていない。
「そういうんはあかんやろ。なぁ紫音、どしたん?」
顔には出さず、手首の痛みに耐える。
チラッと見えたスマホの画面は、メッセージアプリのトーク画面を映していた。
通知音まで消して、あなたは今、誰と連絡を取っているの?
自分で言ったんじゃない、"幼馴染"だって。
どうして隠すの?
どうして私はこんなに気にしているの?
手首を掴んだまま、スマホを取り返そうともしない宗四郎様を見て、指だけを動かした。
ほんの少しだけ画面が見える。
"またしてください♡"
相手からのメッセージだけが見えた。
――何をしてたの?
眉間に力が入る。
「紫音、あかんよ?」
宗四郎様の顔を見る。
怒ってもいないし、笑ってもいなかった。
ただ優しい顔をしているだけ。
「痛いです。離してください……」
力を緩めたので、スマホを彼の胸に置いて、頭の下から膝を滑らせた。
「……お風呂、そろそろです」
リビングを出て自分の部屋に向かった。