第1章 Lesson0 Too Close to Be Safe
「――って!!」
小雨独特の湿っぽい雰囲気をものともせず、突然ドラコが何かに向かってツッコんだ。
「どうしたドラコ?」
「どうしたじゃない!!何で僕達までシリアス調なんだい!?他人の家に転がり込むわけでもない、家族が死んだわけでもない、両親は君を大歓迎している!!これ以上の幸せがあるのかい!?」
「そうなんだ、そこが問題なんだ!!7年間も婚約破棄を目指して生きてきたのに、突然お前と結婚だなんて!」
「それの何が不満なんだい!?」
「不満じゃないのが不満なんだ……」
「なんなんだそれは……」
呆れ果てたドラコは、これ見よがしに深くため息を吐いた。
そう、分かっている。自分が矛盾していることくらい。
しかし恋人になったから即・結婚というのも何だか堅苦しいし、やりたい事はまだまだ沢山ある。それこそ研究とか研究とか研究とか……。
だがこのあやふやな態度のままでは、あれよあれよという間に結婚式まで話が進み、気が付いたらブーケトスまで秒読み状態になってしまう。
何か良い手はないものかと、レイは腕組みをした。
「……何を考えているんだい?」
「今夜のディナーについてだ」
罪悪感の欠片も感じずに、レイはさらりと嘘を吐いた。
そもそも、本当は家だってシリウスとハリーと3人で暮らす予定だったのだ。その為にシリウスはロンドン市内のエンジェルと言う街に、古いが住み心地の良さそうな家を買ってくれた。
だがハリーもシリウスも戦後処理で身動き取れず、残念なことに計画はとん挫していた。
それを良いことに、まるで婚約解消なんて無かったかのように、至極当然とばかりに馬車に乗せられマルフォイ邸へと向かっていると言うわけだ。
……不味い、このままだと本当に、今度こそ本っ当に結婚させられる。レイは眉間にしわを寄せながら、どうすればこの窮地から逃げ出せるか考えた。
「その顔、逃げることを考えている顔だな」
「それ以外何があるんだ?」
「開き直るな」
「無茶言うな」
「いい加減諦めろ」
「絶対に諦めない」
「君はもうマルフォイ家の――」
「それが嫌だって言ってるんだ!」
そう、何故長年にわたって婚約解消を唱え続けてきたのか、原因は『そこ』にあった。レイはふいっとドラコから視線を背けると、子供の様に唇を尖らせて小さく呟いた。
