第1章 Lesson0 Too Close to Be Safe
ハーマイオニー・グレンジャーは、自らの手で改ざんした両親の記憶を取り戻すことに成功した。
2人はオーストラリアに移住しており、居ても経っても居られなかったハーマイオニーは2人を空港に迎えに行った。
「……大丈夫、魔法は完璧のはず」
しかし自分に何度そう言い聞かせても、不安が洪水の様に押し寄せてくる。空港のロビーの時計が刻々と時を刻むのが、酷く遅く感じる。
そして定刻通り、ゲートの向こう側からこちらに向かって走り寄る両親の姿が見えると、ハーマイオニーは子供の様に泣き出し、両親に駆け寄った。
抱きしめ返される温もりが、確かにそこにあることが、何よりも恐ろしく、そして何よりも愛おしかった。
失うかもしれなかった未来が、今、目の前に戻ってきている。その重さに、彼女はただ涙を流すしかなかった。
そしてレイはと言うと、ガタゴトと揺れる馬車の中で、窓の外を眺めていた。小雨の降る中、景色はゆっくりと流れていく。
どこへ向かっているのか、考えないようにしても、嫌でも分かってしまう。
――マルフォイ家の屋敷。
先回りされ、逃げることも許されなかった。
戦いは終わったが、レイの戦いはまだ続いていた。
「……もうすぐ屋敷に着く」
低く、抑えた声が向かいから落ちてくる。ふと視線を上げれば、そこには幼馴染であるドラコ・マルフォイがいた。
見慣れた横顔はどこか以前よりも痩せたように見え、くたびれていたが、レイは心配する素振りすら見せなかった。
屋敷の門が開くと、重々しい音がやけに大きく響いた。まるで、閉じ込められる合図のように。
もう、逃げられない。その事実だけがやけに鮮明だった――。