第1章 🍏
そちらへとそっと視線を向ければ、割とすぐ近くのソファー型チェアに人影が一つ。
人いたんだ…ヤバイ、私独りごと言っちゃったよ。恥ずかしい。
その人はスマホを手に取ると早々に誰かと電話で話し始め、私は再び前へ向くと椅子へと深く座り直した。
ここに誰かがいるの初めて見たな。そんなどうでも良いことを考えながら椅子の背もたれへと背を預け空へと視線を向ける。
真っ暗な空には星一つない。それが何だか切なくて寂しく感じた。
都内だと思えないほどに木々が茂り綺麗な草花が並ぶここは心地が良い。部屋にいる時は窓を見下ろせばそれなりに綺麗な夜景を見ることができるけれど、やはりこうして自然に触れるのとは少し違う気がする。
何も映ることのない空を見上げていると、ぶわりと大きな風が吹いて髪が揺れる。瞬間、バサバサバサという音と共に白い何かが視界に入り込んできた。
あ、飛んでいっちゃう!!
無意識のうちに思わず身体が動き出す。勢い良く立ち上がり床を蹴り上げると私はソレを両手でパシンっ!!と挟むようにしてキャッチし上手いこと床へと着地した。
手に握られている白いソレをみつめる。
「…楽譜?」