第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
もちろん、僕に向けた言葉じゃない。
無理やり引き出しただけの言葉。
それでも、の口からその二文字が出たことに、どうしようもなく満たされてしまった。
「……いい子」
僕は約束通り、止めていた指をゆっくり動かす。
「っ……ぁ……」
もう限界に近い。
だから、最後だけ。
指の腹を当てて、そこをぴんと弾いた。
「んぅ……っ、せ、んせぇっ……!」
は僕の胸に顔を押し付けて、初めての絶頂を迎えた。
その小さな身体が余韻に震えている。
今、この子の頭の中にあるのは何だろう。
僕の声。
僕の指。
僕の体温。
少なくとも今だけは、恵のことなんか考えていないように見えた。
このまま続ければ、消せるかもしれない。
恵に向けた迷いも。
僕以外を見ようとする、その揺れも。
もっと触れて。
もっと泣かせて。
僕のことしか考えられなくして。
そうすれば、また昔みたいに戻るかもしれない。
――僕だけを見ていたに。
もう一度その震える肩に手を伸ばそうとすると、が小さく身を竦めた。
微かに怯えが混じった目で、僕を見ている。
違う。
そうじゃない。
僕が戻したかったのは、こんなじゃない。
伸ばしかけた手が、途中で止まる。
これ以上続けたら、僕がの中から消えてしまう。
考えるまでもなく、戻れなくなる。
でも……。
このまま放っておいたら、はまた恵を見るかもしれない。
恵に好きだと言われて、また揺れるかもしれない。
僕の知らないところで、誰かのものになるかもしれない。
それだけは、絶対に嫌だった。
彼女が欲しがっているものは、渡さないくせに。
僕は、僕の欲しいものだけを欲しがっている。
都合が良くて。
勝手で、最低。
だから硝子に、クズって言われるんだろうな。
触れたい欲も。
僕以外を見てほしくない嫉妬も。
手放したくない執着も。
全部が混ざって、僕の中で黒く咲いていく。
僕は、その花に名前をつける代わりに……――。
を縛るためだけの呪いを落とした。
「彼氏、作んないで」