• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**


***


部屋の戸を閉めた途端、足から力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
先生の声がまだ耳から離れない。



『案外、誰にでもそういうことさせるんだね』



思い出しただけで、息がうまく吸えなくなった。


違う。
違うのに。
誰でもいいわけない。
そんなつもりじゃなかった。

伏黒くんに触れられて、拒みきれなかったのは本当。
あの時、どうしたらいいのかわからなくなったのも本当。
でも、誰でもよかったわけじゃない。

そんなふうに見られたことが苦しい。
よりによって、先生に。


軽蔑された。
もう、前みたいに見てもらえないかもしれない。
前みたいに笑って、名前を呼んでくれないかもしれない。


好きになってもらえなくてもいいから。
先生の一番になれなくても。
特別にしてもらえなくても。


(……嫌われたくない)


さっき先生が拭ってくれたはずの涙が、またぽろぽろと溢れてくる。
浴衣の袖で乱暴に涙を拭ったが、拭いても拭いてもあとからあとから溢れてくる。


でも、先生はどうして謝ってくれたんだろう。



『……ごめん』

『さっきのは、僕が悪かった』



先生は悪くない。
悪いのは私なのに。

それなのに、先生は謝ってくれて。
初めて会った時のように、服の袖で私の涙を拭いてくれた。


だから余計に、わからなくなる。
先生は、私のことを軽蔑したんじゃないの?
私が急に泣き出して困ったからかな。

考えても、答えは出ない。
先生の気持ちがわかったらいいのに。


ふと部屋の中を見ると、伏黒くんが布団で横になっていた。



「……伏黒くん?」



小さく声をかけるが、返事はない。
涙を拭きながら近づいて、顔を覗き込んだ。



「……寝ちゃったの?」



規則正しい寝息だけが聞こえる。

私が部屋を出ていくまで、起きてたよね。
どうしてこんなに深く眠っているんだろう。
疲れてたのかな。

伏黒くんが寝ていて、どこかでほっとしている自分がいた。
もし起きていたら、どんな顔をすればいいのかわからなかったから。
/ 64ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp