第2章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる II**
𓂃 side:五条悟 𓂃
『……ねえ。また、会える?』
それは僕にとって、ひどく聞き慣れた質問だった。
都内のホテルの薄暗い部屋。
ベッドの上で裸のまま横たわる女が、シーツを引き寄せながら僕を見上げていた。
また会える?
そう聞かれるたびに、いつも思う。
とっくに答えなんて決まっているのに。
シャツのボタンを留めながら、女の方へ振り返る。
「うーん、気が向いたらかな」
適当に笑って返すと、女は「いつもそればっかり」と文句を言った。
僕はそれ以上言葉をかけることなく、テーブルの上のサングラスに手を伸ばす。
そのまま背を向けて、部屋のドアノブに手をかけた。
「ちょっとぉ、悟。絶対連絡してよ……!」
背中越しに飛んできた甘ったるい声。
僕はそれを無視して部屋を出た。
ホテルの廊下を歩きながら、深く息を吐く。
あー、やだやだ。
任務が早めに終わって、時間が空いた。
なんとなく気が向いたから、暇つぶしに呼んだだけなのに。
どいつもこいつも勝手に期待して、重い感情を向けてくる。
ふと、廊下の窓に目をやった。
外は視界が白くなるほどの雨だった。
窓ガラスを水滴が激しく叩きつけている。
まぁ、僕はあんまり関係ないけど。
どうせ濡れないし。
けど、伊地知に迎えでも来させるか。
そう考えながら、ポケットからスマホを取り出した。
画面を操作して、伊地知に短くメッセージを送る。
『迎えよろしく。場所送る』
すぐに既読がついた。
相変わらず反応が早くて助かる。
位置情報を送って、スマホをポケットに戻そうとした――その時だった。
短い振動がして、画面がまた明るくなる。
恵からのメッセージだった。
『任務帰りに電車が止まり、本日は高専に戻れません』
『近くの旅館で一泊します。部屋が一つしか空いていなかったため、と同室です』
「……は?」
思わず、声が出てしまった。