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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


「――めちゃくちゃ変。で、最高に特別」



その人は、可笑しそうにそう言って。
私の見ている世界を、あっさりと肯定した。






あれは、小学校に入って間もない頃のこと。


夕方の公園には、誰かが忘れていった赤いバケツが、砂場のそばに転がっていた。
ブランコは風もないのに、ぎい、ぎい、と揺れている。
けれど、公園には私しかいない。


……ううん。
本当は、私だけじゃなかった。


ブランコの下に、黒いものがいた。
人みたいに見えるのに、人じゃない。
犬みたいにうずくまっているのに、犬でもない。
ぐにゃぐにゃした手みたいなものが、砂の上を這っている。
それが、ずっとこっちを見ていた。


見ちゃだめ。


お母さんにも、お父さんにも言われたことはない。
でも、私は知っていた。


ああいうものは、見ちゃだめ。
見ているって、ばれちゃだめ。
ばれたら、こっちに来る。


ランドセルの肩ベルトをぎゅっと握った。
早く家に帰らなきゃと思うのに、足が動かない。


黒いものが動くたびに、ブランコがまた揺れる。


ぎい。

ぎい。



「……っ」



泣いちゃだめ。
声を出したら、きっと気づかれる。
これ以上あれを見ていられなくて、目をぎゅっと閉じた時だった。






「なにしてんの、こんなとこで」



後ろから声がした。
びくっとして振り向くと、知らない男の人が立っていた。


背が高くて、髪が白くて、丸くて真っ黒なサングラスをかけている。
制服みたいな黒い服を着ていて、手には紙袋を持っていた。


この辺の人じゃない。
それだけは、すぐにわかった。
こんな田舎で、あんなに目立つ人を見たことがなかったから。



「ふーん」



お兄さんはブランコの下を見て、ニヤリと口元を上げた。



「しょぼいのに絡まれてんじゃん」



しょぼいの。
しょぼいって、あの黒いやつのこと?



「……あれ、見えるの?」



聞いた瞬間、しまったと思った。
言っちゃった。
誰にも言っちゃいけないことを。
あれが見えているって。


お兄さんが、サングラスの奥からじっと私を見る。
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