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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第20章 王女のアリア


窓の外はとうに夜更けを過ぎている。
けれど、朝まで待つという考えはなかった。

書き上げたばかりのアリアと手紙を手に、イルミは立ち上がる。

扉を開けて静まり返った廊下へ出ると、そのまま迷うことなくアパートの階段を足早に降りていった。




「起きて」

アパートの1階の部屋の戸をイルミは叩く。

ドアが開くと中から執事が寝ぼけた顔を覗かせた。

「イルミ様。……まだ、お休みになられてなかったのですか」

「そんなことより、これを届けてよ。クロロって奴に」

執事は寝巻きの脇から手を入れ、ぽりぽりと身体を掻きながら時計を見る。


「……夜中でございます」

「うん」

「馬車も通りません」

「うん」

「朝一番で出しましょう!」

「あのさ」

イルミは腕組みをして執事を睨みつける。

「はい?」

「お前、ここ来てから何してる?」

「え?」

「仕事?」

「もちろんでございます!」

「……本当に?」

「はい」

「差し入れ買いに行ってるよね」

「はい!」

「毎日」

「……はい」

「毎回ずいぶん遅いよね」

「それは、その……」

イルミは静かに首を傾げた。

「王都、楽しい?」

執事の肩がびくりと跳ねた。

「…………」

無表情のまま、さらりと流れる髪だけが動く。

「……か、観光してるの、ご存知だったのですか……!?」

「当たり前でしょ」

「ひいいいいっ!」

「今すぐ行って」

「え?」

「馬車走らせて」

「えぇ!? 夜中ですよ!?」

「早く届けて」

「は、はいっ!!」

執事は勢いよく駆け出した――が。

「痛っ!」

イルミの蹴りが尻に入る。

「死にたくなかったら急げ」

「は、はいぃっ!」

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