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明日に編んだ舟[明日方舟]

第1章 月夜のアンコール



〜インディゴ目線〜

 最初は何気ない囁かな出会いだった、とインディゴは静かに語るだろう。
 ロドス製薬会社は、優秀な人材を集めて高い志を目指している。なのでロドスは常に人で溢れかえっていて、当然ながらインディゴにも知らないオペレーターが沢山いた。
 ただ、ロドスはとある作戦のために徐々にイベリアと近づいていて、インディゴにも思うところがあった。きっとイベリアでは、自分に出来ることが多くあるはずだ、と。
 ただ、この胸のざわめきをなんと形容したらいいか、インディゴは自分に生まれた感情に困惑していた。それをどうしたらいいのかと悶々と悩んだ末、気づけばインディゴは、ドクターの執務室の扉をノックしていた。
「どうぞ」
 柔らかな声が聞こえ、それはドクターのものではないとインディゴは知りながらも扉を開けた。ドクターの執務室は、ロドスのオペレーターなら誰でも入れるようになっていたが、それはノックの返事をした秘書がいるからだろうとインディゴは考えていた。
 それにしても、自分の知らない声だった、と思いながら扉の先へと目を上げたインディゴの視界には、紫がかった銀髪をしたフィディアの男性が映った。
「こんにちは、レディ。ただ今ドクターは留守にしていまして。もしよろしければ伝言を預かりますが、ここでドクターをお待ちになりますか?」
 フィディアの男性は愛想良く控えめに微笑みながらインディゴに話し掛けた。インディゴは少し戸惑ったが、彼の雰囲気がなんとなく穏やかで温かかったので、頷くことにした。
「……ええ、少し待ってみようと思います」
「では、こちらへどうぞ」
 彼はそう言ってドクターのデスク前にあるソファへ丁寧に手招きをした。インディゴは彼のことを全く知らなかったので、その繊細そうな動きから、貴族かそういう類の動きなのだろうと考えた。インディゴは抱えている杖を手前に引き寄せながら、案内された通りにソファに腰を下ろすと、彼はやや姿勢を低くしながらこう訊ねた。
「コーヒーはいかがです? それとも、紅茶の方がいいでしょうか?」
 それはまるで、本の中で見たようなウェイターのようであった。そのような仕草で転々と貴族のように振舞ったり、従者のように振舞ったりする彼にインディゴはますます困惑したが、同時に「ここはロドスなのだから」という納得もあり、目の前のカップに視線を落とした。
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