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【刀剣乱舞】神様に恋した猫【完結】

第1章 ひとりぼっちの居場所


(大倶利伽羅視点)

この政府塔には妙な猫がいる。

最初に見たのは、雨の日だった。
濡れていたくせに逃げもしなかった。
普通の野良ならもっと警戒する。

「……変なやつだ」

そう思っただけだった。
それ以上でも、それ以下でもない。
――はずだった。
なのに。
気づけば、足が神社に向いている。

理由はない。
任務の帰り、たまたま近いから。
それだけだ。

(……いるな)

石段の上。
小さな影が、こちらに気づいて耳を動かす。

逃げない。
むしろ――

(寄ってくる……?)

すり、と足元に身体を擦りつける。

「……おい」

しゃがむと、当たり前みたいに膝に前足をかけてくる。
警戒心がなさすぎる。
野良とは思えない。

「……元は飼い猫か」

ぽつりと呟くと、猫は小さく鳴いた。
否定もしない。
ただ、そこにいる。

手を伸ばす。
撫でると、目を細める。
その顔が――妙に、安心したように見えた。

(……)

胸の奥が、わずかに引っかかる。
理由は分からない。
ただ――

「……腹は減ってないのか」

気づけばそんなことを言っていた。
餌を持ってきたことはない。

与える気も、なかった。
それなのに。

(……世話を焼く気はない)

はずなのに。
次に来るとき、何か持ってくるかもしれない、と。
そんな考えがよぎる。

「……馴れ合うつもりはない」

誰に言うでもなく、呟く。
猫は分かっているのかいないのか、また身体を寄せてくる。

「……勝手にしろ」

突き放す言葉。
けれど手は、止まらない。
ゆっくりと撫で続ける。

柔らかい毛。
小さな体温。
それが、妙に心地いい。

(……面倒なことになるな)

ぼんやりと思う。
だがその意味までは、まだ理解していなかった。
この感情の名前も。
この距離の危うさも。

そして――
それが、どれほど一方的なものかも。

まだ、知らない。
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