第6章 エデンを覗き見る
「はー、満足」
「そりゃそうでしょうよ。それだけ好き勝手やったら」
「怒んなって」
「べつに怒ってはないけどね」
「そんな花衣ちゃんは明日も仕事?」
「明日はないよ。でも飲み会?がある」
「そっか。じゃ遅くなんだな」
「たぶんね」
「帰り気をつけろよ?」
「うん」
顔見れて良かったわ。でも風邪引かれちゃ困るからそろそろ家入れ。ボサボサの髪をご丁寧に整えながら笑う蓮に、その優しい手つきに、顔が熱くなってくのが自分でも分かる。
また連絡するから。うん、気をつけて帰ってね。手を振って見送って、ウチに入ろうと階段にかけた足がふと止まった。
蓮はどう思ってるんだろう。嫌われてないのは昨日からの言動で十分伝わってる。
知り合い?
友達?
さっきの可愛いも、特別な可愛いじゃない。
女子で例えると可愛い物を見た時のそれ。
今の関係もベストだと思う。
近くも遠くもない絶妙な距離感で。
じゃあどうして。
こんなに悶々としてるんだろう。
あたしは蓮のことをどう思ってるんだろう。
知り合い?
友達?
一線を引いてそれとなく付き合えるような、そんな関係を望んでるのか、はたまた別の何かか。
嫌悪感すら持ってた。
男の人の、自分に向けられる感情が気持ち悪いと思ってた。
それがどうだ。
今じゃもっと欲しいと思ってる。
蓮の、自分に向けられる感情は特別にさえ思ってる。
吐き出した息は白くて儚い。
夜空に上ってく途中で、跡形もなく消えてしまう。
あたしの思考じゃ到底片付けられない想いも、溶けてなくなればいいのに。随分と欲張りになったこの気持ちも一緒に。
そう思うのは、
初めて芽生えた感情が怖かったからだ。