第6章 エデンを覗き見る
「やっぱ閉まってるかー」
扉にかかったクローズのプレートと、一つの灯りも点いてない店内を、息が上がったまま呆然と見つめた。
立ち尽くすこと数分。諦めと申し訳なさを引き連れて、自宅に足を向ける。
今日は予感がしてたんだ。
漠然と上手くいかないかもって。
稀にゲートが大量発生するって聞いてたけど、その稀、がまんまと自分に降りかかるし。普段のシフトなら朝入れば夕方には終わるのに、鳴り止まないサイレンのお陰で定時から2時間もオーバーした。こんな所で引きの強さを発揮するより、もっと他で使いたいよ。
終わってすぐ送ったメッセージは、仕事なら仕方ねーなって当たり障りのない返事。だけど居ても立っても居られずマッハで電車に飛び乗った。
蓮のいるここまでひたすらに走って、閉店時間をとうに過ぎてたことには気づいてたけど、もしかしたら待っててくれてるんじゃないかって。小さな期待が思考をちらちらと掠めてた。それに今日はどうしても会いたかった。
自宅の扉、鍵を開けて中へ入ると、玄関先にまるで置物のように座って出迎えてくれるしし丸を抱き上げた。頭を撫でながら中へ入って、ベッドの上にそっと置いてやれば、腹も撫でろとひっくり返ってゴロゴロ鳴く。
いつもならここで飛びつかんばかりの勢いでモフモフしちゃうけど、そのいつものルーティーンに今日は乗れる気分じゃなかった。
約束したのに行けなかったな。
キャラメルラテ、飲みたかったな。
仕方ないとは言え、多少なりとも気が落ちる。
コートを脱いでハンガーに袖を通しながら、朝一緒に持って出た、でもまさかそのまま持って帰ってくるとは思ってなかった袋をぼーっと見つめた。
明日朝イチで届けてから学校行こう。
蓮がいなくてもマスターに預けてれば大丈夫。
それを掴んで台所に持って行こうとした時、鞄の中から聞こえた端末の着信音。そういえば夕方にもかかってきてたな、太刀川さんから。それどころじゃなくて折り返せなかったのをたった今思い出した。
どうせあの人からだろうと、手に取った端末の画面を見て息が止まった。途端に心臓からどくんどくんと血液を送り出す音がダイレクトに耳に入ってくる。