第5章 無重力に花は咲く
でも花衣ちゃんのことは好きなんだろ?って、こっそり呟いたつもりの迅さんの言葉は、申し訳ないけどおれの耳でも簡単に拾えた。たぶん、隣の柚宇さんも。その証拠に視線はゲームに釘付けなくせ、口元が緩んでだらしない顔になってる。
つられておれの口元も緩んでくのは、華の10代、惚れた腫れたが三度の飯より大好きなお年頃だ、寛大な心で許してほしい。
「おい出水」
「はいはい、なんすか」
「あとで模擬戦10本な」
「なんでおれだけ!?」
そうは問屋が卸さないとばかりに、がっつり様子を伺ってた太刀川さんの不敵な笑みが怖すぎる。どうしたって八つ当たりにしか見えない申し出を、拒否ることもこっそりとズラかることもできないのは、後から倍になって返って来ることが分かってるからだ。
どれだけ精神的にキツくても、どれだけ他に気を取られて頭が惚けても、任務やランク戦となると、いつもの太刀川さんとなんら変わらずにやってのける。そう言う所はマジで凄いと思う。
「三角関係の傍観者なんてワクワクするね~」
「当事者ならぜってぇごめんだけどな」
今度こそ聞かれてたまるかと、テレビの音量を少し上げた。なのにアンタどんだけ地獄耳なんだよ!思わず突っ込みそうになったのは、さっきよりもさらに意地の悪い笑みと言葉がおれに向かって一直線に飛んできたからだ。
まだまだおれには、この戦闘バカは手に負えない。マジで勘弁してくれ。
「出水、やっぱ10本2セットに追加な」
「………」