第5章 無重力に花は咲く
「柚宇さん柚宇さん、今日の太刀川さん、なんか変じゃね?」
「ん~?……あ~、たぶんあれじゃない?今日花衣さんデートだから」
テスト期間が終わった最初の週末、やっと通常運転に戻った太刀川隊は今日も朝から元気で平和。ただ1人を除いて。
任務終了後、作戦室に戻るや否や、柚宇さんのサンドバッグにさせられたおれは、コントローラーを片手に、ずっと浮かない顔したウチの隊長の安否確認を彼女に耳打ち。
返ってきた答えを聞いて、やっぱりかって思いと、そこまでなるって重症じゃね?って思いと、やっと自分の気持ちを自覚したのかって思いが複雑に絡んだら、何故か笑いが込み上げてきた。
ソファーにふんぞり返って、天井の一点を見つめたまま動かない。そうかと思えば何かを思い出したみたいに端末を弄る。さっきからそれの繰り返し。
つい数分前に訪ねてきた迅さんが、目の前に座ってるってのに、あーとかおーとか、まるで会話になってなかった。
でも気持ちは分からないでもない。太刀川さんからここまでいろんなモンを掻っ攫って行った花衣さんは、今ごろ他の男とよろしくやってんだもんな。おれがこの人でもこうなるわ。そんな立場には、絶対なりたくねぇけど。
「迅おまえ、どこまで視えてた?」
「ある程度は視えてたよ。でも他人の気持ちまで視えるわけじゃないから、まさかそんなんなってるってのは分からなかった」
「そんなんって、なんだよ」
「え、言っていいの?」
「言わなくていい」
花衣ちゃんにダダ甘な太刀川さんがたまーにチラついてたけど、そう言うことかだったのか。太刀川さんの刺した釘を、見事なまでにスルーした迅さん。それを笑顔で睨むこの人の目が据わっててぞっとした。つーか、迅さんのサイドエフェクトがなくたって、太刀川さんの気持ちは誰が見てもバレバレだったぞ?分かってないのは当人同士だけで。
「けどかなり薄かったのに、決め手はなんだったの」
「薄かった?」
「そーそー、太刀川さんがそうやって腑抜けんなる可能性」
「好きでなってるわけじゃねーよ」