第5章 無重力に花は咲く
6時にセットしていた端末のアラームよりも、10分も前に目が覚めた翌日。普段ならあと5分あと5分精神で、通学ギリギリまでベッドの中、しし丸と存分にイチャイチャするのがお決まり。
だけど今日はなんだかぱっちり目が覚めて、そう言う気分にはなれなかった。
明けても暮れてもランク戦。
寝ても覚めてもポイント、ポイント。
そんな生活だったから、やっと体が緩んでも頭は素直に休む気配がない。アドレナリンが出すぎているせいか、いつも以上にすっきりしてる気がした。
朝イチで本部の事務局まで手続きをしに行って、午後は2コマの授業。夕方終わって急ぎ足で目指した場所はあたしのお気に入り。
やっと飲める。
やっとゆっくりできる。
やっと癒される。
そう胸を高鳴らせて入り口の扉を潜ったのが今からちょうど10分前。運悪くあたしの指定席が埋まってたけど気にしない。もう一つ、サイフォンが数個並んだ前のカウンター席。そこが2番目に好きな定位置だ。
「おまたせしました」
カウンターの向かいから伸びてきた腕とエスプレッソ。出してくれた人物は今日も営業スマイル全開な彼。目が合うと星でも飛びそうな勢いで、またまた笑顔を向けられて首すじが痒くなりそうだった。
「……スノーマンだ」
「かわいいでしょ?」
ええ、とっても。言葉にする代わりに首を2、3度縦にコクコク。でもどっちかと言えば可愛いより、こんなの描けるのすごい!って方が今の心情には合ってる。エスプレッソの表面に描かれたそれを、思わず鞄から取り出した端末で、写真を撮るほどにはクオリティーが高くて。やっぱりこの人が描いたなんて、あのコンビニで出会した彼を想像するとよけいに思えなくなる。
飲むのがもったいないな。じーっと見つめて口もとが緩みそうになった時、頭上から降ってきた彼の声に顔を上げた。