第28章 猿の家
【猿の家】
今住んでいるところでは、子供が今度通うことになる小学校まで遠く、若干、手狭であるため、子供が小学生に上がるタイミングで新しいマンションに引越すことにした。
新居は今住んでいるところよりも築年数こそいっているものの、広かったし、なによりも交通の便が良いのが気に入った。
まあ、築年数のせいでなんとなく薄暗く、雰囲気がイマイチな感じもあったが、小学校6年間が終わるころにはまた引越しをするだろうし、子供の身体のことを考えれば近いにこしたことはない、と思っていた。
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しかし、引越しをして数日後、すでに問題が起き始めた。
子供が異常に怖がるのである。
「怖い、怖い」
「何かいる!何かいる!」
とひっきりなしに怯えた。
特に怖がったのは、子供部屋に、とあてがった部屋だった。一人では頑として入ろうとしなかったし、親が一緒でも、その部屋にいるうちは、足にしがみついて離れない。無理に離そうとすれば泣き喚く始末であった。
「おさる、おさる!」
「あっちの部屋に」
と壁を指す。壁の向こうはリビングだったがもちろん、猿なんていない。
引越し後の一時的な気持ちの乱れだろう、すぐ治るだろうとは思っていたが、怖がり様があまりに異様なので、こちらまで怖くなってきてしまった。
おかげで、新居用にと買い揃えた子供用の学習机などは、急遽、夫婦の寝室にと考えていた部屋に入れ、妻と子供がそこで寝起きをし、私が子供用に用意していた当該の部屋で寝ることとなった。