第2章 声
斬っても、斬っても、胸の奥の引っかかりは消えなかった。塵になっていく頸を見下ろして、ため息を吐く。
何かが、ずっと残っている。理由は分からない。
ただ、カヲルに触れた手のひらだけが、やけに熱を持っていた。
「霞柱、いかがなさいました?」
事後処理に来た隠が、不思議そうに声をかけてくる。僕は手のひらを見たまま、ぽつりと聞いた。
「……ねぇ。カヲルって知ってる?」
「カヲルさん、ですか? えぇ。何度か事後処理をご一緒したことがございます」
「どんな人?」
少し考えてから、隠は答えた。
「そうですね……一言で申しますと、剣士のような方です」
「剣士?」
「はい。私たちは鬼はもちろん憎いですが、役目上、被害に遭われた剣士様や一般の方に目を向けます」
淡々とした説明。でも、その次の言葉だけ少しだけ色が変わった。
「ですがカヲルさんは、どのような鬼だったのか、どのような血鬼術を使ったのか、そういったことを、すぐに見抜いておられました」
そこで一度、言葉を区切り僕の方をしっかりと見た。
「……あと、目、でしょうか」
僕はわずかに顔を上げた。
「目?」
「はい。まるで」
隠は少し言い淀んでから続ける。
「剣士様が鬼を見据えるときのような目を、しておられました」
「そう。ありがとう。じゃあ僕は次の任務へ向かうからあとは頼んだよ」
「承知いたしました。お気をつけて」
血の臭いの残る林を後にし、次の任務へ向かいながら考えた。
カヲルは本当は剣士でいたかったのではないか。でももう刀を握ることも、戦場を見ることもできなくなってしまった。
カヲルの望みは?
君の声で君の言葉で聞かせてよ。