第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
雑誌の発売日、街の書店からはその雑誌が瞬く間に消えていった。
「ヒーロー×モード」と銘打たれた特別号。
表紙を飾ったのは、トップモデルのと、人気急上昇中の若き実力派のイケメンヒーロー、ショート。
本来、人気者同士のコラボレーションには「恋人みたいな振る舞いは認めない!」というファンの厳しい視線がつきまとうものだが、今回ばかりは違った。
ネット上の反応は、驚くほどの一致を見せていた。
『この二人、お似合いすぎて文句の付け所がない』
『美男美女すぎて、もはや二人の間に流れる空気さえ神々しい』
『付き合ってほしいというか、このままずっと壁になって眺めていたい』
嫉妬を通り越し、その圧倒的な「正解」を突きつけられたファンたちは、ただただため息を漏らすしかなかった。
例の雑誌は轟の元にも、編集部から贈られた見本誌が届いていた。
ずしりと重みのある紙の束を捲り、彼は手を止める。
そこに映っていたのは、自分であって、自分でないような男だった。
普段の戦闘服を脱ぎ捨て、洗練されたスーツを纏った姿。
そして何より隣に並ぶ女性に向けている、その温度を孕んだ眼差し。
「……これが、俺なのか」
轟は独りごちた。
鏡で見る自分とは決定的に何かが違う。
それは、隣に彼女がいたからこそ引き出された、自分でも知らない自分の表情だった。
そして、視線は必然的に彼女へと吸い寄せられる。
撮影現場で生で見たも、確かに眩しいほどに素敵だった。
だが、カメラのレンズを通し、選び抜かれた一枚として切り取られた彼女は、また格別の輝きを放っている。
「……綺麗だ」
思わず言葉が漏れた。
戦いの中で命を懸ける美しさとは別の、人々を魅了し、一瞬で心を奪うためのプロの美学。
轟はしばらくの間、自分のページであることを忘れたかのように、ただ一人のファンとして彼女の姿に見入っていたーー。