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俺の推しの娘☆

第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】


冷たい炭酸が喉を焼くが、体の中心に居座る熱は引いてくれない。


「からかってないわよ。……ねえ、ショートさん。みんなが羨ましがっているあの姿を、一番近くで見ていたのは私なの。それって、すごく贅沢なことだと思わない?」


彼女の潤んだ瞳が、真っ直ぐに轟を射抜く。
シャンパンのせいか、あるいはこの密室の空気のせいか。
撮影の時とは違う、もっと静かで、それでいて抗いがたい熱量が二人の間に流れ始めていた。



その後も、撮影の裏話から互いの意外な共通点まで、会話は途切れることなく続いた。
時折、が「あの時、実は心臓がうるさかったのよ」と冗談めかして明かせば、轟も「俺の方が、生きた心地がしなかった」と返し、二人の間に柔らかな笑い声が満ちる。


しかし、楽しい時間は残酷なほどに早い。


「……もう、こんな時間ね」


ふと時計を見たが、名残惜しそうに呟いた。
食事は終わり、テーブルの上には空になったグラスだけが残されていた。


プロヒーローとトップモデル。
立場ある二人にとって、深夜まで共に過ごすことはリスクでしかない。


「ああ。……名残惜しいが、今日はここで解散だな」


「ええ。出口、分かってるわね? 私は先に出るわ」


彼女は再び手際よくキャスケットを被り、サングラスでその美しい瞳を隠した。



「ショートさん、今日は誘ってくれてありがとう。……本当に、楽しかった」


ドアノブに手をかけた彼女が、最後に一度だけ振り返った。
サングラス越しでも分かる、優しく温かな眼差し。


「……こちらこそ。気をつけて帰ってくれ」


「ええ。また、現場でね」


静かに扉が閉まり、個室には轟一人が取り残された。
さっきまでそこにいた彼女の香りと、体温の残滓。
轟は彼女が去った後の椅子を見つめ、時間が経つのを待つ。


(……現場で、か)


彼女が最後に残した言葉と、以前再会を匂わせていた「新しいプロジェクト」のこと。
それを楽しみに待つ自分は、もはや上鳴たちにアドバイスを仰がずとも、自分の意思で彼女を追いかけたいと願っていることに気づいていた。


数分後、轟は一人で店を後にした。


夜の冷たい空気が火照った頬に心地よく、夜空を見上げながら、彼は次に送るメッセージの文面を、静かに考え始めていた。



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