第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
「上鳴たち? ああ、友人とみんなで選んでくれたのね。……可愛いところあるのね、ショートさんは」
彼女の屈託のない笑い声に、轟の緊張が少しずつ解けていく。
雑誌の中ではあんなに熱く、激しく肌を寄せ合った二人。
だが、静かな個室で向き合う今の時間は、それよりもずっと濃密で、特別なものに感じられた。
「さあ、今日はお礼に来たんでしょ? 楽しみにしてるわね」
彼女がメニューを開き、悪戯っぽく微笑む。
轟はポーカーフェイスを保ちながらも、テーブルの下で膝に乗せた手にそっと力を込めた。
「……乾杯しよう」
最初に頼んだ飲み物が届く。
轟が差し出したグラスにはジンジャエールが注がれ、の手元には琥珀色の泡が弾けるシャンパンが揺れる。
まだ未成年の轟と、少し前に成人を迎えている彼女。
そのわずかな年齢差が、今の状況をさらに特別なものにしていた。
「ショートさんは、お酒はまだお預けね」
「ああ。二十歳になったら、その時はまた付き合ってほしい。……今はこれで十分だ」
カチン、と軽い音が個室に響く。
「それにしても、雑誌の反響が凄まじくて驚いている。……クラスメイト…同期の連中には散々言われたよ」
「ふふ、やっぱり? どんな風に?」
轟は上鳴や峰田たちの騒ぎを思い出し、少しだけ顔をしかめた。
「『色気がやばい』だの、『抱きたい男1位』だの……。特に女子たちからは、直視できないとまで言われた。俺はただ、君にリードされるがままだったんだが」
「あら、それは光栄ね。でもね、私の周りも凄かったのよ」
はシャンパンを一口含み、楽しげに目を細めた。
「モデル仲間や編集部の女の子たちに会うたび、『ずるい!』『代わって!』って攻め立てられて。あんなショートさんを引き出せるなんて、どうやったのって、根掘り葉掘り聞かれちゃった」
「……君の周りでも、そんな話に?」
「そうよ。みんな、あなたのあの『初々しい表情』に、すっかりやられちゃってるんだから」
彼女は少し身を乗り出し、悪戯っぽく囁く。
「自覚、ないのかしら。あなたが必死に理性を保とうとして、視線を泳がせていたあの瞬間が、どれだけ女性の独占欲を煽るのか」
「……。からかわないでくれ」
轟はたまらず飲み物を煽った。