第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
『今度、時間ある時、撮影のお礼に――。』
お礼を兼ねて誘った食事会。
スマホの画面越しにから届いた快諾の返信に、轟は小さく息を吐いた。
端から見れば無表情に近いが、その歩幅はいつになく軽く、どこか浮き足立っているのは明白だった。
「おーい、轟じゃん!なんか 珍しくニヤけてねぇか?」
背後から声をかけられ、轟は現実に引き戻された。
振り返ると、そこにはパトロール終わりの上鳴がニカッと笑って立っていた。
「上鳴か。……別に、ニヤけてはいない」
「嘘つけ! お前な、絶対なんかあったろ。ほら、今から飯行くぞ!」
強引に腕を引かれ、近場の居酒屋へと連行される。
席に着くなり、上鳴は待ちきれないといった様子で身を乗り出した。
「で? 例の雑誌、見たぜ。お前、あのちゃんとあんな距離で……ぶっちゃけ、どうだったんだよ!」
「……どう、とは。撮影は、彼女のリードのおかげで円滑に進んだが」
「そういう硬い話じゃなくて! あの『抱かれたい男』の顔、あれ絶対素じゃねぇだろ。撮影終わった後とか、なんか進展なかったのかよ」
上鳴の追及は止まらない。
さらに、偶然近くの現場にいた切島と瀬呂まで呼ばれて合流し、図らずもプチ同窓会のような様相を呈してきた。
「轟、マジですごかったな! 男から見ても『エロい』ってこういうことかって勉強になったぜ!」
「切島まで何を……。あれはカメラマンの指示だ」
「指示だけであの目は出せねぇって。瀬呂、お前もそう思うだろ?」
「だな。特にあのシーツのカット、ありゃ完全に『男』の顔だったぜ。SNSでも『初々しさが逆にヤバイ』って大バズりだしな」
「うるさいぞ、お前ら。……飯が冷める」
轟は冷奴に醤油をかけながら誤魔化すが、上鳴の目は誤魔化せなかった。
「……あ、こいつ耳赤い! 轟、お前まさか……撮影の後、連絡先とか聞いちゃったりした?」
固まる轟にその場の空気が一瞬で沸騰した。
「マジかよ!」
「あのショートが!?」
「相手あのトップモデルだぞ!?」
外のヴィラン退治より騒がしい連中に、轟は観念したように短く答えた。