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俺の推しの娘☆

第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】



「ショートさん、最高だ! その、彼女を壊してしまいそうな……でも大切にしたいっていう、迷いのある目が堪らない!」


絶賛の嵐の中、轟はもはや自分がどんな顔をしているのかも分からなかった。
ただ、腕の中にいる彼女の鼓動が、自分のそれと同じくらい速く打ち鳴らされていることだけが、彼を現実へと繋ぎ止めていた。






「はい、オッケーです! 全カット終了! お疲れ様でした!」


スタジオに響き渡るカメラマンの快活な声。
その瞬間、張り詰めていた空気がふわりと霧散した。
轟は逃げるように差し出されたバスローブに袖を通し、深く前を合わせた。
まだ肌に残る彼女の体温と、鼻腔にこびりついた甘い香りが、心臓の鼓動を鎮めてはくれない。
隣では、もまた手慣れた仕草でローブを羽織り、乱れた髪を指先で整えていた。


「……お疲れ様、ショートさん。今回も、いい仕事ができたわね」


彼女の、何事もなかったかのような涼しげな微笑み。
轟はその余裕に圧倒されながらも、一歩踏み出し真っ直ぐに彼女を見据えた。


「ああ。……今日も、君に助けられた。内容に戸惑ってばかりで、無様な姿を見せてすまない」


「ふふ、そんなことないわよ。あの『初々しさ』、カメラマンさんも絶賛してたじゃない。私には出せない、素敵な表情だったわ」


彼女の屈託のない言葉に、轟は少しだけ頬を緩めた。
だが、すぐに真剣な表情に戻り、懐から自身のスマートフォンを取り出した。


「……前回と、それから今日。君には教わってばかりだ。その、お礼をしたいんだが」


少しだけ言い淀み、視線を落とす。


「もし良ければ、連絡先を教えてくれないだろうか。今度、改めて食事に誘いたい」


それは、ヒーローとしての共演者への礼儀を超えた、一人の男としての精一杯の勇気だった。
は一瞬だけ驚いたように瞳を丸くしたが、すぐに柔らかな光をその瞳に宿した。


「ええ、喜んで。私も、あなたともっとお話ししてみたいと思ってたの」


二人は並んで画面を操作し、静かな電子音と共に互いの存在を繋いだ。

画面に表示された彼女の名前をなぞり、轟は密かな満足感を噛み締める。


これでようやく、レンズを通さない彼女に触れる準備が整ったのだ。




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