第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
撮影当日、轟はかつてない窮地に立たされていた。
指名を果たし、再会を心待ちにしていたのは事実だが、彼は重大なミスを犯していた。
企画書に記された「撮影内容」の詳細に、まともに目を通していなかったのだ。
「……これは、本当にこれで合っているのか」
鏡に映る自分の姿を見つめ、轟は呆然と呟いた。
そこには腰の低い位置に、辛うじて布面積を保っている程度の際どいスイムウェアを一枚纏っただけの、ほぼ裸に近い自分だった。
いわゆるセミヌード。
筋肉の隆起から肌の質感まで、すべてを露わにするための装い。
新人ヒーローとしての若さと、鍛え上げられた肉体の躍動を切り取るというコンセプトは、今更ながらあまりに刺激が強すぎた。
轟は困惑を隠せないまま、用意されたバスローブを深く羽織り、落ち着かない足取りでスタジオへと向かった。
セットの隅で待機していた轟の視界に、一際華やかなオーラを纏った人影が飛び込んできた。
「お久しぶり。……ショートさん」
聞き覚えのある、涼やかな声。
だった。
彼女もまた、轟と同じように柔らかなバスローブを羽織っていたが、その襟元からは美しい鎖骨が覗き、足元からはしなやかに伸びた素足が大胆に露出している。
その下には、撮影用の最小限の水着を纏っているだけなのは明白だった。
「……ああ。……久しぶりだ、」
轟は、思わず視線のやり場に困って声を詰まらせた。
前回のドレスアップした彼女も素敵だったが、無駄な装飾を削ぎ落とした今の彼女の美しさは、直視するにはあまりに毒が強かった。
「驚いた? 今回の内容」
が、悪戯っぽく微笑みながら歩み寄る。
彼女の方は、すでにプロのモデルとしてのスイッチが入っているのか、露わな肌を晒すことに躊躇いはないようだった。
「……正直に言えば、戸惑っている。ここまで……その、露出が多いとは思っていなかった」
「ふふ、指名したのはショートさんでしょ? 覚悟を決めてもらわないと」
彼女はそう言うとふっと声を潜め、彼にしか聞こえない距離まで近づいた。
「でも、良かった。……他の女の子に、今のあなたを見られなくて」
バスローブ越しに、彼女の体温が伝わってくる。
轟の心臓が、ヴィランとの死闘の時よりも激しく、熱く鼓動を刻み始めた。