第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
数日後、マネージャーが差し出した企画書をひと目見た瞬間、は指先が微かに震えるのを感じた。
『緊急特集:抱かれたいヒーロー1位――ショート。その視線の先に』
そこには、新人ながら並み居るトップヒーローを抑え、あのホークス以来の快挙となる首位に輝いた彼の名前が、重厚なフォントで刻まれていた。
「前回のコラボが大反響だったのは知ってるわね? 今回、雑誌側は別のトップモデルを立てる予定だったらしいの。でも、彼が言ったそうよ」
マネージャーが、どこか誇らしげに、そして少しだけ茶化すように声を潜めた。
「『相手役を指定できるなら、引き受ける。さんでなければ、この話は受けられない』って」
「……彼が、そう言ったの?」
は思わず問い返していた。
あの撮影の日、不器用で、けれど真っ直ぐに自分を信じてくれたショート。
撮影の技術を教えたのは自分だったはずなのに、いつの間にか彼の瞳の熱に当てられていたのは、私の方だったのではないか。
世間が抱かれたいと熱狂する彼の、たった一人の相手役として、彼自身が自分を望んでくれた。
「そこまで言ってもらえるなんて……光栄ね」
は企画書を見て、鏡の中に映る自分を見つめた。
そこにはプロのモデルとしての高揚した顔があった。
「もちろん、お受けします。最高に素敵な特集にしましょう」
彼が熱望してくれたその期待に応えてみせる。
対等な、あるいはそれ以上に互いを焦がし合うような、至高の一枚を刻むために。
マネージャーから「さんが快諾してくれた」という知らせを聞いた瞬間、轟の胸のうちは、かつてない高揚感で満たされた。
ヒーローとしての公務や訓練の合間、ふとした瞬間に、あのスタジオで感じた彼女の体温や、凛とした横顔を思い出している自分に気づく。
世間が騒ぐ「抱かれたいヒーロー」という称号など、彼にとっては興味はなかった。
だが、その名目によって再び彼女の隣に立つ権利を得られたのだとしたら、初めてその幸運に感謝したいとさえ思った。
「……そうか。受けてくれたか」
短く答えた轟の声は、いつになく弾んでいた。