第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
「抱かれたいヒーローランキング一位!おめでとう、ショート!」
所属事務所のデスクで、マネージャーが興奮を抑えきれない様子で端末を差し出した。
画面には、若き才能たちがひしめく中で頂点に君臨した「ショート」の名前が大きく躍っている。
新人ながらの首位獲得は、元No.2ヒーローであるホークス以来の快挙だった。
「……ランキングか。あまり実感が湧かないな」
轟は無造作に自身の髪を掻き上げた。
人々を救うのがヒーローの領分であり、世俗的な人気に興味はない。
しかし、次にマネージャーが口にした言葉には、わずかに眉を動かした。
「この結果を受けて、大手出版社のファッション誌から特別号のオファーが来ているわ。メイングラビア。テーマは『頂点に立つ男の、秘めたる情熱』……要するに、あなたの魅力を最大限に引き出す特集を組みたいそうよ。それとね、今回は特別に『相手役』のモデルを立てる予定だそうだけど……」
「相手役、か」
その瞬間、轟の脳裏に鮮烈な光景が蘇った。
強烈なフラッシュ。
ふわりと香った、洗練された香水の匂い。
そして、自分の強張った手を優しく導いてくれた、あの温かな指先。
「ショート。正直に言って、これだけの大型企画、受けて損はないわ。でも、あなたの意志を尊重したい」
轟はしばらく沈黙し、手元の資料を見つめた。
世間が自分に何を求めているのかは知らない。
だが、もし、またあの彼女の隣に立てるのなら。
あの時、カメラのレンズ越しに感じたあの高鳴りの正体を確認できるのなら。
「……条件がある」
「えっ?」
轟は顔を上げ、静かだが確固たる意志を宿した瞳でマネージャーを見据えた。
「相手役を指定できるなら、引き受ける。……彼女以外なら、この話は断ってくれ」
予想外の具体的な指名に、マネージャーは一瞬言葉を失った。
しかし、すぐにプロの顔に戻り、力強く頷いた。
「わかったわ。先方に伝えてみる。……ショート、あなたがあそこまで誰かに執着するなんて珍しいわね」
マネージャーが去った後、轟は窓の外に広がる夕焼けを眺めた。
『抱かれたいヒーロー』そんな仰々しい称号などどうでもいい。
ただ、もう一度、彼女の瞳の中に映る自分を見てみたいと思った。