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異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第13章 懲りずに陥れたいの? 中編


アルベルトは本棚を見上げた。

 確かに……鉄製の固定具で壁に留められている。

 
「……」

 
彼は何も言わない。だが、考えている。
正義型は、矛盾を嫌う。
そして矛盾は――一度気づくと、消えない。
私は静かに一歩前へ出る。

 
「お怪我は?」

 
それだけ言う。
責めない、問い詰めない。ただの事実確認。
それが逆に、空気を揺らす。
周囲の令嬢が囁く。

 
「……また事故?」

 
「でも今の話……」

 
「エミリア様、さっき廊下に……」

 
小さな疑念が、広がる――静かに。そして確実に。
その夜。
私は日記を開く。今日のページに箇条書きで書く。
・リリアーナ、演出の頻度増加
・証言の矛盾発生
・観客の疑念、初発生
ペンを止める。
そして、初めて新しい項目を書く。
・演出型の限界点:
 “観客が疑い始めた瞬間”
私は小さく息を吐く。焦る必要はない。
演技は、回数を重ねるほど難しくなる。
一度成功した舞台は、二度目には「再演」になる。
三度目には「作為」になる。
そして四度目には――“嘘”になる。
私は最後に、静かに書く。

“物語、微動。”

窓の外では、夜風が揺れている。
学院はまだ眠っている。
だが――水面下では確実に何かが変わった。
エミリア・ヴァレンシュタインは今日も泣かなかった。
その代わりに、世界が少しだけ泣き止んだ。
そして――次に崩れるのは、リリアーナの“物語”だ。
 あの日から――リリアーナは、少しだけ静かになった。
泣き声が減ったわけではない。
むしろ、涙は相変わらず流れている。
だが、“間”が増えた。

昼休みの中庭。

リリアーナは令嬢たちに囲まれていた。

 
「怖かったの……本当に……」

 
震える声、震える肩、完璧な被害者の姿。
以前なら、その場の空気は完全に彼女へ傾いた。
だが今日は違う。
令嬢の一人が、少しだけ首を傾げた。

 
「でも……」

 
その一言で、空気が止まる。
リリアーナの涙が、ほんのわずかに揺れる。

 
「図書室の棚って、固定されているのよね?」
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