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異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第12章 懲りずに陥れたいの? 前編


次に動いたのは――リリアーナだった。
 
――三日後。
 
学院の朝は、いつもよりざわついていた。

 
「聞いた? またよ」

 
「ええ……今度は図書室ですって」

 
私が廊下を歩くと、会話は波のように割れる。
視線が集まり、そして逸れる。
私は足を止めない。
図書室の前には、小さな人だかりができていた。
中央にいるのは、もちろん――リリアーナ。
そして、その前に立つのはアルベルト。
彼女は泣いていた。

まただ……

だが、今回は少し違う。

 
「エミリア様が……」

 
その言葉が出た瞬間、周囲の空気が止まる。
アルベルトの視線がこちらへ向いた。
私は人だかりの外側に立っている。
静かに。
本を一冊抱えたまま。

 
「……今、来たところですが」

 
嘘ではない。
私は事実だけを言う。
ざわめきが走る。
リリアーナの涙が、一瞬だけ揺れた。

 
「で、でも……さっき……」

 
言葉が続かない。
当然だ。
私は今、廊下の角からここまで歩いてきた。
それを見ていた生徒が、すでに何人もいる。
密室はない。
私が作らなかったからだ。

――リリアーナ嬢。詰めが甘いぞ。

 心の中でほくそ笑んでしまう。
 さぁ今回の物語は?

 彼女の筋書きに興味さえ湧いてくる。
 この完璧な状況をどう書き換えるのか。
 
アルベルトが低く言う。

 
「……何があった」

 
リリアーナは震える声で言う。

 
「図書室で……本棚が……倒れて……」

 
彼女は肩を震わせながら続けた。

 
「エミリア様が、私を睨んで……」
 

その瞬間――一人の男子生徒が小さく声を上げた。

 
「いや……」

 
全員の視線が向く。

 
「俺、図書委員だけど……」

 
彼は戸惑いながら言う。

 
「本棚、固定されてるよ。倒れないように」

 
――沈黙。
空気が変わる。ほんの、わずかに。
リリアーナの涙が止まる。
ほんの一瞬。
その“止まった瞬間”を、私は見逃さない。
 アルベルトは本棚を見上げた。
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