異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第11章 令嬢は冷静です。さぁどうする? 後編
「エミリア様……」
その声は震えている。だが周囲に視線を配る余裕はある。
観客確認よーし!
私は立ち上がり、距離を保ったまま応じる。
「お怪我の具合はいかが?」
「はい……もう大丈夫です」
細い指が胸元を握る。完璧な構図だ。
だが、私はそれに寄り添う。
「それは何より。無理はなさらないで」
攻撃しない。否定しない。ただ、理性的に気遣う。
彼女の瞳が、ほんのわずかに迷う。予想外なのだろう。
悪役は、もっと冷たいはず。もっと刺すはず。
しかし、それはあくまでも過程だ。
そうやすやす引っかかってたまるか!性悪ヒロイン!
だから、私は刺さない。舞台を成立させない。
――そのとき。
「……リリアーナ」
アルベルトが歩み寄る。彼は一瞬、私と彼女を見比べた。
涙を浮かべる少女。穏やかに立つ公爵令嬢。
構図が、以前ほど鮮明ではない。
彼の中で、まだ答えは出ていない。
だが、疑問は消えていない。