• テキストサイズ

異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第10章 令嬢は冷静です。さぁどうする? 中編


「殿下」

 
形式を崩さない。彼は少し言葉を選ぶように視線を伏せた。

 
「……君は、本当に彼女を責めていないのか?」

 
来た。

おいおいと思いつつ、私は即答しない。
一拍、置く。
 

「責めるには、理由が必要です」

 
彼の眉がわずかに寄る。

 
「だが、彼女は君に睨まれたと……」

 この王子も大概だなと思いながら、私は口を開いた。

 
「殿下」

 
私は静かに言葉を挟む。

 
「私は常に、同じ目ですわ」

 
嘘ではない。冷静で、無表情で、理知的。
それが私。

 
「もしそれが恐怖に映るのなら……それは私の落ち度かもしれません」
 

素直に、引く。攻めない。アルベルトの視線が揺れる。
彼は正義型だ。弱者を守る。だが、矛盾を嫌う。
今、彼の中で小さな齟齬が生まれている。
“冷酷な加害者”は、こんな態度を取るだろうか?
答えは、まだ出ない。
だが――考え始めている。それでいい。
その夜。
私は再び日記を開く。
・殿下の疑念は初期段階
・周囲の空気は中立へ傾きつつある
・リリアーナは警戒を強める可能性大
演出型は、疑われると過剰になる。過剰は、ほころびを生む。
私はランプを消す。
闇の中で、静かに思う。物語はまだ大きく動かない。
だが、水面下では確実に変化している。物語は、派手に裏返らない。静かに、重心がずれる。
エミリア・ヴァレンシュタインは、今日も泣かない。
涙の代わりに、布石を置く。
そして私は確信している。
次に崩れるのは――構図の“必然性”だ。
 その夜、日記を閉じたあとも、私はすぐには眠らなかった。
物語は動いていない。
/ 24ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp