異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第8章 令嬢は静かに分析する 後編
恐怖は、観客の前でのみ発動する
これは純粋な感情じゃない。演出。
でも、証明はできない。
じゃあどうする?
否定しない。暴かない。ただ――疑問を植える。アルベルトの中に。彼は公平であろうとする人。
感情に流されやすいけれど、理を理解できないわけじゃない。
――ならば。
涙を叩き落とすのではなく、透明性を提示する。
「安全点検の報告は、学院に提出を」
「承知しました」
「そして、私は公の場で彼女を気遣います」
セバスがほんの一瞬、驚いたのが分かるが、私は続ける。
「攻撃すれば、物語は完成する。私はその構図に乗らない」
悪役像を、崩す。
冷たい公爵令嬢が、理性的に配慮を示す。
その違和感が、最初のひびになる。
涙は強い。でも、長くは続かない。
理は遅い。でも、積み重なる。
私は立ち上がる。
胸の奥は、不思議と静かだった。
「物語を壊す必要はないわ」
ただ、均衡を崩せばいい。完璧な構図に、ほんの少しの歪みを。それだけで、観客は思う。
――あれ?
と。涙の構造は、分解できた。
次は――疑念を、蒔く番だ。
さぁお嬢さん準備はいい?
こちとら準備万端よ?
社会経験持ちの乙女ゲーマー舐めんなよ!