後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第4章 琳 中編
その瞬間、背後から怒号。
「ぼさっとするな新入り!さっさと洗え!」
棒が振り下ろされる。
私は洗濯物を抱えながら、心の中で笑った。
飛び降りた先が地獄でも。
どうせなら――
――ここを攻略してやる!
古代王朝の城の片隅、洗濯場。
下女として転生した私は、まだ知らない。
やがてこの城の頂点に立つ男――若き皇帝と出会い、
後宮の構造そのものを揺るがす存在になることを。
今はただ、鼻血を拭いながら思う。
「……ここ、会社よりブラックじゃない?」
――ブラック職場…まさか転生してまで、職場がブラックなんて…
そんな自嘲じみた想いが胸をよぎる。
しかし、こちとらブラック企業に10年以上務めあげた経験がある。
――経験者舐めんな…一回目は逃げたけど、もう逃げない。
こんなふざけた世界絶対変えてやる…
私は深く決心する。
ここでの私の名前は"琳(りん)"らしい。
齢17歳位らしい。
らしいというのはこの世界に迷い込んで、多分この世界の私と1番仲が良いと思われる"桃児(とうじ)"に聞いたからだ。
「阿琳(ありん・りんちゃんの意)、今日はどうしたの?普段あんな失敗しないのに、具合でも悪い?」
と、桃児は濡れた手で、私の額を触り、自分の額にも手を当て、熱を測った。
私はそっと桃児のてを払って
「なんでもないよ。ちょっと風邪をひいたみたい」
と言いながら、愛想笑いをうかべて、何とか誤魔化した。
――まさか、中身28歳の異世界転生OLとは言えないよな。
心の中で私はひっそり笑った。
私の部署は宮廷内で、最も過酷で、キツイ仕事『洗濯場』だった。
後宮の、女官長から、宦官、妃たちの服は全部ここで洗われる。
実際とんでもない量の洗濯物がひっきりなしに運ばれてくる。
私も桃児も、監督女官の監視の目や指示を気にしながら、一心不乱に洗っていた。
「モタモタしてんじゃないよ!しっかり仕事しないと飯抜きだからね!」