後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第3章 琳 前編
私は会社のビルの屋上にいた。
眼下には、街灯に照らされた車がいくつも並び、鈍く光るボディがまるで私を誘うように揺れていた。
一時間休憩も取れない。
サービス残業は当たり前。
大卒でも「女だから」と笑われる社風。
どれだけ成果を出しても、手柄は同期や上司のものになる。
男女平等なんて、どこの世界の話だ。
特にこの会社では。
忙殺の日々の果てに、追い打ちのように知らされた彼氏の浮気。
ブラック企業に身を捧げ、会う時間も作れなかった私が悪いのか。
努力しても報われない。
愛しても裏切られる。
私はこの世界に、本当に必要とされているのだろうか。
濁った思考に引かれるように、私はフェンスを越えた。
駐車場はこの時間ほとんど無人。
落ちても巻き込むのは車くらい。
「それくらい……許されるよね?」
呟きは夜に溶けた。
両手を広げる。
新しい世界があるなら、そっちへ行きたい。
そう思って、私は身を投げた。
――次の瞬間。
「――んがっ!」
鼻に走る激痛。
階段につまずいたような衝撃。
ばしゃっ、と水が飛び散る音。
「こら!何やってんだい!?このグズが!」
怒鳴り声。
……え?
死後の世界、早くない?
私はよろよろと立ち上がり、鼻を押さえた。
あ、鼻血。