後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第2章 宣言!後編
怒りはない。
ただ計算している。
「四妃を飛び越える人事。これは後宮のみならず、朝廷への宣戦布告」
すぐに理解する。
――皇帝は、本気だ。
朱雀妃・紅蘭は、文を握り潰した。
「どうして……!」
頬が紅潮し、金の瞳が揺れる。
「私は、あの方のためにここにいるのに……!」
悔しさと、焦燥と。それでも胸の奥でわかっている。
琳は、ただの女ではない。
それが余計に苦しい。
玄武妃・玄珠は、薄く笑った。
「なるほど」
盤面がひっくり返った。
「駒ではなく、盤を変えるつもりなのね……陛下」
そして静かに呟く。
「琳。あなた、生き残れるかしら?」
興味が、灯る。
白虎妃・白玲は目を輝かせた。
「えっ!?琳が一番えらくなるの!?」
侍女が慌てて口を塞ぐ。
「声が大きいです!」
「だって面白そうじゃない!」
無邪気に笑う。
「琳、きっと困ってるだろうなぁ」
その予想は正しかった。
そして。
当の本人は、後宮の一室に軟禁されていた。
「……あの人、何考えてんだァ……」
琳は扉を背に、ずるずると座り込む。
護衛は増やされ、出入りは制限。
名目は“保護”。実質は隔離。
「中央妃?黄龍妃?……は?」
理解が追いつかない。
四妃より上。王妃に次ぐ位。しかも後宮指南役。
(それってつまり――)
後宮の秩序を、全部任せるってことじゃない。
「いやいやいや無理でしょ」
頭を抱えるが、胸の奥が揺らめいているのがわかる。
それは闘志の炎だ。
玉座で見た、あの目。迷いのない決意。
「……私を、そこまで信用してるの?」
ぽつりと呟く。
扉の向こうで、足音が止まる。
誰かが来た。敵か、味方か。
深呼吸する。
泣く暇も、迷う暇もない。
立ち上がる。
「……中央妃、ね」
自嘲気味に笑う。
「ブラック企業どころじゃなくなったな」
外では、後宮の空気が変わり始めていた。
派閥が動く。陰謀が巡る。
そして玉座では、若き皇帝がただ一人、静かに呟く。
「逃がすと思うなよ、琳」
その声を、誰も知らない。
――後宮は今、歴史を変える夜を迎えていた。