後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第12章 事件発生! 中編
「もし毒であるなら、狙いは命ではなく“疑心”かと」
空気が変わってあの方の目が細くなる。
「なぜそう思う」
「裏地は洗濯場で必ず露見します。隠す気がない。つまり“見つかること”が目的」
――沈黙。
私は続けた。
「後宮は噂で揺れます。
犯人探しが始まれば、妃同士の疑念は広がる。
それ自体が武器になります」
黎明が一歩出る。
「下女が政治を語るか」
私は目を伏せたまま答えた。
「洗濯場は、後宮の裏側が流れ着く場所です。
布は、隠し事を全部覚えています」
しばらくの沈黙のあと――あの方が、微かに笑った。
「……面白いな」
その声は、どこか愉しげだった。
「もし誤りなら?」
「処罰でしょう」
「怖くないのか」
私は顔を上げた。
「選ばれないまま終わる方が、怖いです」
黎明の視線が揺れた。
あの方はしばらく私を見つめ、やがて静かに言った。
「試してみる価値はある」
三日後。
朝の食事はいつもの通り。
マントウと、少し酸っぱくなりかけた野菜炒め。
それでも、ここでは食べられるだけましだ。
私は慣れた手つきで、傷んだ野菜を避けながら食べる。
「琳ってさ、その技術すごいよね」
桃児が笑う。
「腐ってるとこだけ避けるの」
「生きる知恵よ」
私も笑った。
その時だった。
「琳」