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後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!

第11章 事件発生! 前編


――あの素服な方が、何者なのか?

私はまだ知らない。

けれど、ただの貴人ではないことだけは、空気で分かる。
今日も私は洗濯場で桃児と並んでいた。
食事は三回。
いつも通りのマントウと、少し傷んだ野菜の炒め物。
私は黒ずんだ葉を指先でよけながら口に運ぶ。

「琳、ほんと器用だよね……」

「生き延びる才能かな?あとは慣れ」


私は笑いながら私は桶に向き直った。
そこへ運ばれてきたのは、上質な外衣。
青糸の刺繍。雲と波。
四妃のうちのどなたかのものだ。
水に浸した瞬間、違和感が走った。
裾の裏地に、灰色の薄い滲み。
血ではない。
泥でもない。
指で擦ると、わずかに白く溶ける。
 鼻を寄せると、苦い匂い。

――砒霜。

薬房の下働きがこぼしていた言葉を思い出す。
けれど、それ以上に気になったのは場所だった。
裏地。
洗濯場で必ず見つかる位置。
もし本気で毒を盛るなら、こんな分かりやすい場所に残すだろうか。
これは殺すためではない――疑わせるための痕跡。
後宮に火をつけるための、小さな火種。
私は桶の縁を握りしめた。見なかったことにする?

……無理だ。

私はもう、あの日あの人と目を合わせてしまった。
知らないふりは、できない。
夕刻。
名を呼ばれた。現れたのは、あの方の付き添いの宦官――黎明。

歳は二十4~6位か?歳冷たい理性をまとった男。

 
「来い」
 

短い命令。
偶然ではない。私は“再度”呼ばれたのだ。
後宮の一角にある書院は静まり返っていた。
あの方は灯りの下で文書を閉じ、私を見る。

 
「洗濯場で妙なものを見つけたそうだな」

 
私は跪き、淡々と告げた。

 
「青糸の外衣の裾裏に、灰色の残留物がございました」

 
「それが毒だと?」

 
黎明の声が鋭く差し込む。

 
「断定はできません。ただ――」

 
私は息を整えた。

 
「もし毒であるなら、狙いは命ではなく“疑心”かと」
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