後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第7章 蒼煌帝国 中編
おばさん…話好きだな…
「洗濯場は一番下っ端だけど、一番全部を知ってる場所でもあるんだよ」
監督女官がぽつりと言ったことがある。
洗濯場には、皇后様から下女まで、全員の衣が集まる。
衣は階級ごとに洗い場が分かれている。
皇后専用。
四妃専用。
上級妃。
中級妃。
下級妃。
女官長。
一般女官と下女。
桶も違えば、使う薬剤も違う。
「間違えたら、首が飛ぶよ」
桃児は真顔で言った。
洗濯場のほかにも、
縫製房――衣の仕立て直し。
香料房――香や薫物の管理。
薬房――妃たちの体調管理。
厨房――食事全般。
文書房――記録や伝達。
礼式房――儀式や作法の指導。
まるで小さな国家機関だ。
「後宮はね、帝の私生活の場所だけど、それだけじゃないんだよ」
監督女官はそう言った。
「ここは力の均衡を保つ装置でもある」
四妃がいることで、有力家系の不満を抑える。
妃たちの実家が後宮を通じて帝と繋がる。
つまり――後宮は政治の延長。
私は桶の水面に映る自分を見る。
ただの下女、琳。
でも、巨大な構造の中にいる。